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葉佩が目覚めた時には、皆守は出かけていた。一人分の食器が、水切りの上に伏せられている。灰皿には三本のラーク。
皆守が、いつからあの甘い香りを捨てたのかは分からない。目を閉じて、彼の残り香を探してみる。苦い煙の匂いが、微かに鼻腔を刺激した。ほんの少しだけ安心する。彼は、確かに此処に居た。そして、自分はまだ彼の香りを憶えている。ざわめく甘さも、優しい苦さも、まだ思い出せる。
誰も居ない部屋で、ソファに足を乗せて膝を抱える。休みが重なるという幸運は、そうそう頻発する現象ではない。皆守の一人ぐらい、養えるのに。男の矜持だとかそんなくだらないものを、まだ彼は気にしているのだろうか。逸れてきた思考を、散らかしたままにして目を閉じる。
出会った頃の彼を思い出し、その甘さを思い出す。不意に、あの甘さが恋しくなった。彼の口元を飾っていたあのパイプは、今どこにあるのだろう。捨てたのだろうか。もう二度と戻らないのだろうか。湧き上がった焦燥は、恐怖にも似ていた。
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