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抽斗の奥から随分と懐かしい物が出てきた。裏返すと、平仮名で所有者の氏名が記されている。小学校低学年の時分に使用していたクレヨンだと思い至り、あまり思い出したくない記憶が脳裡を過ぎていった。今の自分が所有していても使用する事はないと断じて、燃えるゴミの袋に放り込む。と、その手を葉佩が止めた。訝しんで視線を向ければ、その時にはもう取り上げたクレヨンの箱を嬉々として開封していた。
眼前に現れた不ぞろいな絵具を検分し、葉佩が一つの事実に気付いた。さまざまな長さで並ぶクレヨンの中に、一本だけ全く減っていない色がある。
身を削って画用紙に色を移すのが、クレヨンの存在意義だ。一枚の絵を完成させてこそ、その用途は果たされる。そして子供というものは、往々にして好む色を多く消費する。価値があるのは、描かれたその完成品に他ならないのだ。
一度たりとも使用された形跡の見えない、新品同様の紫色のクレヨンを見下ろす。
迷う素振りすら見せず、不要と断じた物を次々とゴミ箱に放り投げる皆守の背中をこっそり盗み見て、「こいつって昔っからこんな奴だったんだなぁ」と、声には出さずに呟いた。
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