2014.07.11
思ってたより激しくなかった。
いや、それに越した事はないんだけどね。
なんかこう、あれだ、肩透かし。うんそれだ。
いや、いい事なんだけどね。
平和だったって事だし。
平和が一番だよね。

今日も平和でした。
拍手ありがとうございます。





2014.07.10

 よく分からなかったので、「おいしい」と言った。どうやら正解だったようだ。皆守は少しだけ顎を上げて、片頬だけで微笑んだ。そうしてからアロマに手をやって、口元を隠して目を逸らす。もう一度「おいしい」と言って、葉佩は空になった皿をテーブルに置いた。
 舌がぴりぴりするけど、葉佩は嬉しかった。

 またある日、よく分からなかったので「おいしかった」と言った。八千穂はそれに上目づかいで「本当に?」と返し、空になった弁当箱を受け取った。もう一度「おいしかった」と言うと、八千穂はやっと笑ってくれた。よかった、とささやいて、まだ少しだけ疑わしそうにしていたけど、それでも嬉しそうに笑ってくれた。
 胃がしくしくしていたが、葉佩はそれで満足だった。

 不気味な、生命のようでいて生命ではない、物体と呼ぶにはあまりに有機的なその存在を、先人に倣って葉佩は化人と呼んでいた。
 まるで肉のようなそれは、間違いなく肉だった。食い千切り咀嚼して嚥下すれば、それは間違いなく分解されて吸収されて葉佩の血肉になった。食えるのだから、これは生命だ。葉佩はそう判断した。

 咀嚼して、嚥下する。ここまでは意思だ。消化して、分解して、肉体の分子と結合して、化学反応を起こして、内蔵や筋肉や脳を動かすエネルギーになる。これは、肉体が不随意的にやってくれる。葉佩にとって食事とは、そのようなものだった。飢えれば動けなくなると、葉佩は経験から学んでいた。だから、食べるのはとても重要な事だと、葉佩はもうとっくに知っていた。

 スパイスを変えてみた。得意げにそう言われても、葉佩には違いが分からない。
 ちょっと失敗しちゃった。はにかんでそう言われても、葉佩には違いが分からない。
 分からないので、「おいしい」と言って残さず口に入れて咀嚼して嚥下する。言葉の意味を正確には理解していなかったが、葉佩はいつもそう言った。そう言うと、相手はだいたい笑ってくれる。
 時々は、申し訳ない気持ちにもなる。騙しているような気持ちになる。本当は何も分からないのに、その場しのぎで嘘をついているのだと自覚する。

 それでも、葉佩は自分なりにその言葉を定義しているのだ。それがたとえ彼や彼女が知っている意味とは違っても、葉佩にとってその言葉は嘘ではないのだ。

 ありがとう、と言いたかったのだ、葉佩は。




という話を書こうと思った。
のだが、もう書いたので満足してしまった。

葉佩はきっと「まずい」とは絶対に言わないだろうな。
だって思わないんだから。
それって幸せなのかなぁ?

留守中に拍手ありがとうございました!





2014.07.03
方陣技を捏造したい。
と思ったので、考えてみた。

が、何も思いつかなかった。
なんかこう、相棒っぽいのがいいよね。
緋勇が殴って京一が斬る!
みたいな感じの。

ただの一対多数の一方的な暴力にしか見えない。
なんて事は、気が付いてても言わないであげて。

拍手と投票ありがとうございます!





2014.07.01

 ふと、葉佩は考える。たとえば、休日の朝であったり、あるいは疲れ果てて眠りにつく一瞬前であったり、または愛用の小銃をホルスターから抜いた直後であったり、状況は様々だが、それは前触れもなく、唐突にふと浮かび上がるのだ。
 それは、自分の本当の名前についてだった。

 彼や彼女は、葉佩と呼ぶ。葉佩九龍というのが、今の名前だ。その前には、別の名前で呼ばれていた。もっと前には、また別の名前だった。そういえば、番号で呼ばれる事もあった。そうしてずっとさかのぼって、やがて辿り着くのは、自分が産まれた瞬間だ。
 産まれたのだから、産んだ女がいたはずだ。産んだ女がいたのだから、男がいたはずだ。それが、今では葉佩と呼ばれる男の両親だ。葉佩はふと、空を見上げるように漫然と、空想のような曖昧さで、考える。

 自分の両親は、自分にどのような名前を与えたのだろう。

 与えられなかったのかも知れない。母と父がくれたのは、ただ命というものだけで、それが葉佩のすべてだったのかも知れない。
 それでもよかった。命を憎む気持ちも、たしかに時折りないではないが、産まれ落ちた事を後悔する事も、たしかに偶さかないではないが、それでも葉佩は与えられた命をみずから捨てようとまで思った事はない。憎くとも、悔やもうとも、惜しむ気持ちがわずかにまさる。葉佩はそのような、畢竟するに幸福な男だった。

 幸福な男は、それなのに、ふと考える。母に望まれ、産まれた子供。父が願って、産まれた子供。そんな空想をする。そうすると、自分がどこかへ消えてしまうような気がした。何もかもが幻で、これは胎児が見る夢なのだと、そんな気分になった。彼や彼女が呼ぶ声は、寂しさが作り出した幻覚なのではないか、と。それを否定する根拠さえ持たない葉佩は、用心深く、努めて冷静に、目を閉じて、ゆっくり深呼吸して、また目を開く。
 目を閉じる前と同じ光景が見えると、涙が出そうなほど安堵するのだ。

 どうした、と彼が言う。どこか痛いの、と彼女が問う。
 夢ならどうか覚めないでと、今では葉佩と呼ばれる男は顔には出さずに心で祈る。

 俺に名前がないなんて、どうか知らないままでいて。




葉佩の過去について考えようと思った。
思っただけだった。
という訳で、まだ葉佩に過去はありません。

自分に関するまともな情報を与えてもらえなかったりとか。
毎日がエイプリルフールの悪い大人に囲まれて育った。
とか、どうだろう。

うん、そんな感じで行こうか。
ごめんよ葉佩、
と、たまには思うんだ。
たまぁにね。