2013.09.23 秋分

 放課後になって、一時はやんでいた雨がまた落ちてきそうな雲ゆきになっていた。黒い雨雲が頭上を覆い、傾き始めた陽光が西から差し込む。暗いのに明るいという不思議な空を、教室の窓から見上げる。いつもは元気な二人が、今日はどうも様子がおかしい。
 なんだか変な日ね。美里が言う。微笑みながら、まるで幸せな物語の終わりのように。

 蓬莱寺の氣が、つむじ風を起こす。教室への被害を最小限に抑えようと、醍醐が咆哮を上げてその氣を打ち消す。その隙を、桜井が突いた。
 背後から襟を掴まれた、と同時に蓬莱寺の木刀が唸りを上げる。ボタンがふたつ、虚空へと跳ね上がった。透かさず強く襟を引かれ、醍醐の片袖が腕から抜ける。
 その瞬間、かしゃんと何かが壊れるような小さな音が教室に響いた。

「あんたら、何してんの?」
「訊くより先にまずシャッター押しちゃう辺りがアン子だね」
「ええと、醍醐君ピンチ?」
「アン子、邪魔すんじゃねぇぞ」
「うん、しないけど」
「むしろしてくれ」

 結論を述べると、醍醐の訴えは届かなかった。遠野は宣言どおり誰の邪魔もせず、手近な椅子に腰掛けて、新宿区内のラーメン屋で最も早く冷やし中華を始めたのはどの店か、という集計に取り掛かった。蓬莱寺と桜井が、気を取り直して醍醐に向きなおる。

「醍醐、おとなしくしてりゃ悪いようにはしねぇよ」
「この時点でだいぶ悪い事をしてる自覚はないんだな」
「ボクだって本当はこんな事したくないんだ。ただ、したいだけで」
「すまん桜井、何を言ってるのか理解できなかった」
「つまり、暑いのさ」
「そうか」

 着崩れた上着を直しながら、醍醐が頷く。それは諦めに似ていた。
 する事もなかったので遠野の作業を手伝っていた美里が、「冷たい物でも食べに行きましょうか」と提案する。もう少し早く言って欲しかったと言外に含めながら、醍醐はそれに同意した。




いつだったか忘れたけど雑記に書いた話。
の続きが、いつの間にか発生してたので貼り付けてみました。
醍醐が愛されてると平和なあの話です。
たしか今年の夏だったと思う。
けど、定かではない。
2、3ヶ月ぐらい前のような気がする。
けど、定かではない。

そろそろ暑い話は終わりですね。
拍手ありがとうございます。





2013.09.22

 あいつだけは違うと、すがるように思っていた。
 誰もが葉佩を助けようと、みずから闇に飛び込んだ。闇を恐れるあまり狂気に取り込まれて、墓守にまで成り下がった者たちまでもが、黒い砂を吐き出して、翌朝には葉佩に笑いかけた。
 あの男だけは違うと、皆守は思っていた。

 夷澤が敗れたと聞いても、特に何も思わなかった。ああやっぱりな、と思い、次は自分だと、表層に浮かんだ言葉はそれだけだった。分かっていた事だ。神鳳でさえ敗北した男に、あの野犬が勝てる道理もない。
 月に煙を吹きかけて、皆守は薄く笑った。

 ようやく違和感を覚えたのは、その翌朝だった。生意気な態度は自信と矜持のようにも見えるが、夷澤は決して満ち足りた人間ではない。溢れんばかりの強欲は、時にこの學園において絶対的な権力を誇る阿門にすら牙を剥いた。双樹が苛立たしげに彼を罵っていたのも、皆守は知っている。
 持たざる者を嘲り、持つ者に嫉妬する。それが皆守の知る夷澤だった。

 驚愕したのは、翌朝だった。教室に入ろうとした葉佩に声をかけたその顔を見て、皆守は思わず握り締めた拳をその眼鏡に叩きつけそうになった。後ろめたい気持ちを含むようなその物言いに、裏切られたような気持ちにすらなった。
 葉佩が嬉しそうに微笑む。そうすると、夷澤までもが唇にきつく角度をつけた。見上げるように、焦がれるように、好戦的に瞳を上げる。屈辱もなく、敗北した相手に微笑むような男ではないと、皆守はずっと思っていた。

 夷澤だけは違うと、ずっと思っていた。
 満たされず、自分が劣っているなどと夢にも思わず、上にいる者には敬意よりも嫉妬を、下にいる者には容赦ない侮蔑を浴びせる。そんな彼が、自分を負かした相手に、まさか微笑みかけるとは。




いつだったか忘れたけど、寝起きにふと思った事を書いたメモ。
を、なんとか文章にしようと思ったらそもそもメモがよく分からなかった。
ので、想像しながら書いてみた。
けど、やっぱりよく分からなかった。

なんか、あの、あれだよ。
皆守視点の夷澤に関する何かなのは確かなんだ。
まあいいや、思い出すか思い付くかしたらどうにかするよ。
どうにか…したいよ…

拍手ありがとうございます。





2013.09.20

 ふいに、ざわりと鳥肌が立った。顔を上げるといつの間にか夜は更けていて、開け放しだった窓から風が舞い込んでいる。夏のまま半袖のシャツだった腕が、几帳面に粟立っていた。
 気付かぬうちに季節は通りすぎている。ずっと不思議だった。自転や公転や、23.44度の傾きだとか、自分でもどこで知ったのか憶えていない知識が増えても、まだ不思議だった。どうして時間は流れるのだろう。どうして物質や生命は、永遠ではないのだろう。

 栞をせずに本を閉じる。もう何度も読み返した本だ。先へ進む為の目印は必要ない。
 立ち上がって窓を閉めるのは億劫だったが、このまま眠れば夜明け前に寒さで目覚めてしまうだろう。未だ来ぬ時を想像して、現に在る苦痛を受け入れる。おかしな話だ。未来が本当に存在するかも分からないのに。

 いざよい、と心に浮かんだ言葉は、十六夜の月か、あるいは己の在り様か。たゆとう思考に冷笑して、窓を閉める。それとほぼ同時に、どうしてもっと早く窓を閉めなかったのかと後悔した。あと数秒でも早く、あるいは遅く窓を閉めていたら、きっと気付かなかった。

 つい先日この《學園》に舞い込んだ不穏な笑顔の《転校生》が、闇に溶け込むように、音もなく墓地へと消えていった。
 時間が止まれば、彼も死なずに済むのだろうか。そんな事をぼんやりと考えた。




季節の変わり目は、いつもなんとなく緩やかな気分になります。
ゆったりまったり寂しい。

葉佩はこんな季節に来たのか。
とか考えてた訳ではないんですが。
…葉佩はこんな季節に来たんだね。

拍手ありがとうございます。





2013.09.18

ねえ、少年。
今、笑ってる私を、軽蔑する?

あいつの事は嫌いじゃなかったよ。好きでもなかったけどね。
そりゃ、悔しいさ。できるなら世界ごとぶっ壊してやりたいほど。
でも私には、世界をぶっ壊せる力なんてないんだよ。
悔しいけどね、ないんだよ。

ちっちゃい体で大きな荷物、担いでさ、見ちゃいらんなかったよ。
だからって誰も見てないとこでさ、血反吐はくこたないよねぇ。
そんなとこは、嫌いだったかな。

もうその荷物、下ろしていいんだよ。
自分と自分じゃない奴の血にまみれなくっていいんだよ。
安心して、次の朝が来るまで眠ってていいんだよ。

あんなちっちゃいあいつに、ばかみたいに重たいもん押し付けやがって。
本当はアホみたいに優しいあいつに、あんな酷い事させやがって。
あいつは夜も眠れないほど、つらかったのに。

ねえ、少年。
よかったねぇって思ってる私が、君は、諦めて、達観したふりして、しょうがないやと笑ってる大人に見える?
今、笑える私を、軽蔑する?


この文章には、3人の登場人物がいます。
まず、語っている「私」
その聞き手である「少年」
そして、語られる「あいつ」

「少年」は問いかけられています。その解答は、記されていません。
この文章は、解答を「読み手」に委ねています。
つまり、登場人物である「少年」は、同時に「読み手」でもあります。

主題である問いは「私を軽蔑する?」という文章で表されています。
「少年」=「読み手」が解答を得る為の情報として、「私」の心情が記されています。
そしてその文章は、ある一定の方向を示唆しています。
すなわち、「少年」=「読み手」は、「私」の問いかけを、否定する事を期待されています。

ここで追記。少年の答え。

「軽蔑しますよ。諦めて笑ってるあんたなんか、最低だ。
 俺は悔しい。えぐり取られたみたいに悔しいです。
 あんただって悔しいでしょう。あの人の望みを、あんただって知ってたでしょう。
 だったら笑うな。逃げるな。戦え!」


という二重否定の独り遊びが楽しくてしょうがない今日この頃です。
さらっとポエミィ比喩を入れるのも、そこはかとなく快感です。
ひとりが嫌だっていう人は、本を読んだらいいんじゃないかな。
あとは金取れ正直すぎる変換やめて愛機筋トレとか。





2013.09.14
ストーリーに惚れた作品では腐萌えしない。
という法則を、だいぶ前から気付いてはいたんだけど再認識した。

キャラ萌えはいいんですよ。
存分にいちゃいちゃゴツゴツしてくれって思う。
そいつが楽しそうにしてればわたしも嬉しい。

なんかでも、受け入れがたい腐ってのがあるんですよ。
腐女子を毛嫌いする人の気持ちも、だからちょっと分かります。
ところで毛嫌いの毛ってなんだろう?

調べてみた。
鳥獣は好き嫌いを毛並みで判断するから、だってさ。
へぇ〜!
なんの話だったか思い出すのはもう諦めてるよ。
年取ると集中力が続かなくなるって本当なんだね。

拍手と投票ありがとうございます。
双樹さんに粘度の高いミルクでもぶっかけるかな。





2013.09.09
入れ墨の話を引っ張ってます。
じゃあどんな入れ墨かなって考えてみたんです。
龍とか複雑な絵柄は、かっこいいけどなんか違う。
もっと記号みたいでいい。

という訳で、「9」とかそんなんかなーと。
チ○ノちゃんのお蔭で完全にネタになっちまったぜ。
まあいいや、葉佩はきっと人生が寝たじゃないネタだから。
なんで愛機はわたしの気持ちが分かるんだ。

拍手ありがとうございます。





2013.09.08
入れ墨してる葉佩ってどうだろう。

そもそも入れ墨って、身分証明ですよね。
何も持ってない死体が発見されても誰だか分かる為のもの。
つまり入れ墨は、自分の死後に死体を引き取る人の事を考えて入れるもの。
家族のもとに、あるいは故郷に、間違いなく帰る為のもの。

入れ墨してる葉佩って、どうだろう。
しかも親しい人しか知らないような、見えづらい所に。
絵柄はなんでもいいんです。
かっこいいものじゃなく、小さな記号みたいな目印。

とかなんとか、秋の夜長に考えてみました。
気付けば白露も過ぎてましたね。
拍手ありがとうございます。





2013.09.05
黄龍編でひーさんと皆守が対決する話を読みたい。
と、ふと思った。
書きたいんじゃない。読みたいんだ。
むしろ観戦したいんだ。
本気で闘うふたりを、ただ見守るしかない外野になりたい。

どっちを応援したらいいのか分からないやっちーとか。
いっそ皆守が負ければいいとこっそり思ってる阿門さんとか。
やっちまえぶっ殺せぇ!って全力でひーさんを応援する葉佩とか。
ま、ひーちゃんなら余裕だろ、とか余裕ぶっこいてる京一とか。

…皆守の味方が少なすぎて泣けてきた…
誰か書いて(描いて)くれないかと、淡い夢を見ている。

拍手と【友】ありがとうございました!





2013.09.03
死にネタってずるいよね。
と、最近つくづく思う。
だってどうしたって記憶に残るじゃないか。
読み返せないのに忘れられないじゃないか。
そいつがいい奴なら、なおさら。
好きな奴なら、なおさら。

死に感情を動かされない人なんていないと思うんだ。
わたしが特別に涙もろいってのは、まあ、ないとは言わないが。
でも取り返しのつかない喪失ってのは、いつだって強く残る。
それを話の中核に持ってくるのは、ずるいと思うんだ。

他人の不幸は密の味とは、よく言ったものだ。
自分で書くのはいいんだけどね。

拍手と【友】ありがとうございます!