2013.06.27

 彼にしては珍しく、食物ではない土産を置いていった。彼は形の残る物を置いていかない。他の誰かにはプレゼントしているのかも知れないが、少なくとも皆守の記憶している限りでは、彼は何ひとつ残さなかった。
 いつものようにスパイスだとか、カレーに合う漬物だとか、そんな物を期待しつつ恐れつつ箱を開けると、不思議な色の球体がまず見えた。真っ先に爆発物である可能性を考慮した皆守は、彼を本当には信用していないのだろう。それでもその箱を開けて中身を確認したのだから、まったく信用していない訳でもないのだ。

 ふたりの関係性にも似て言明しがたく、名状しがたく、淡くも色濃く目に残る色のそれは、丁寧に薄紙に包まれている。まるで壊れ物のようだと、皆守は少しだけ微笑む。彼が持ち歩く物として、壊れ物とはあまりにも相応しくない。ふいに見えた不相応が、彼の知らない一面を表しているようで、なんだか心地好く感じられた。

 取り出してみれば、なんの事もない。皆守にとってはありふれた物だった。突飛と超常を携帯する彼にしては、あまりにも他愛ない土産だ。覚えず笑みが深まる。

 金属でできたそれを、カーテンレールに吊り下げる。垂れる風受けまでもが驚くほど薄い金属だった。精緻な細工が日差しを受けて、しゃらしゃらと色を変える。
 しばしぼんやりと窓辺に座ってみたが、しかし待てども風は吹かない。するどい陽光ばかりが照らすその物体にもいつしか飽きて、我に返って日常を取り戻す。そういえば買い物にゆかねば、晩飯にもありつけぬ状態だった。

 気だるい夏の午後、ゆるりと道を歩けば、気の早い笹の葉に短冊が吊るされている。
 憐れなる星に願いなど託せるはずもなく、ささやかな願いすら口に出せぬ我が身を思い、知らず頬が笑みを作る。それは自嘲でありながら、彼を想う微笑でもあった。悲しくもいとおしく、憐れなる星に、せめて安らぎをと。

 誰もいない部屋に戻り、皆守は不思議な音を聞いた。ささやくような、さざめくような、かそけくもするどく、異質なるふたつの金属が、夕涼の風に吹かれて泣いていた。
 知りもしない子守唄が訳も分からず懐かしいように、皆守は暮れかけた夏の日の窓辺でひとりその音に聞き入った。




きっとなんかのオーパーツとかなんだよ。
で、気がついたら失くなってるんだ。
なんだったんだろうなぁって思いながら、でも皆守は訊かない。
そんな不思議ちゃんな葉佩ってどうだろう。

年に2、3回ぐらいは会うけど、それだけ。
特に何もない。でも、必ず年に数回は接触する。
そんなふたりもいいなぁ。
という話だったのか?

拍手ありがとうございます!





2013.06.22
今なんか書いたらすっごい鬱な話になるだろーなー。
…それはそれでいいかも!
と思って書いてみたら、異様に甘じょっぱい話になった。
やっぱ憂鬱なら皆守だったか。

そんな感じです。
拍手ありがとうございます。





2013.06.19

 いつもの教室で、蓬莱寺がぽつりと呟いた。

「醍醐、脱げよ」
「うん、それがいいね」

 湿気と熱気にあてられて、午後の授業には必ず現れる睡魔に敗れて、つい先程ようやく意識を取り戻した桜井が、朦朧とした口調でそれに賛同する。寝言のような声に呼ばれた醍醐は、わずかに苦笑するだけだ。

「醍醐クン、なんで脱がないの?」
「何をいきなり」
「聞いてただろ、今の会話」
「会話は聞いてたが、さっぱり分からなかった」
「脱げよ」
「・・・目が据わってるぞ二人とも」

 ゆらりと立ち上がった桜井が、素早く醍醐の懐にすべり込む。ほぼ同時に、蓬莱寺が木刀を振り上げた。桜井が作った死角に入り、切っ先に氣を集める。ちなみに美里と緋勇は、為す術もないのでぼんやりとなりゆきを見守っていた。




という話を書こうと思った。
なんか醍醐が愛されてると世界は平和な気がする。
なんでだろ。
お父さんだからかな。

拍手と【愛】ありがとうございます!





2013.06.16
通勤の道で、もうヒマワリが咲いてて思わず見上げました。
まだアジサイも真っ盛りなのに。
そういやヒマワリとアジサイが出てくる歌ネタを京一でやりたい。
と思ってたんだ。かつてわたしは。

なんか今年は花が一斉に咲くような気がします。
あっという間に終わるのは毎年の事なんですが。
なんか今年は特に過ぎ去るのが早い気がする。
どっかで誰かがメイド・イン・ヘブンでも発動したかな。

拍手ありがとうございます。





2013.06.14
「あー、古傷が疼くぜ」
「鬱陶しい」
「すげぇ痛いんだよ」
「痛み止めはどうした」
「痛いってゆーかね」
「痛いんじゃないのか」
「なんかこう、ぎしぎししてる感じ」
「油でも差しとけ」
「俺は機械じゃねぇ!」
「へえ」
「あー痛いすげー痛い死にそう」
「よし分かった」
「たぶん違うと思うけど、なに?」
「俺が楽にしてやる」
「うん、結構です」
「そうか」
「あー痛いマジ痛い」
「構って欲しいんならそう言え」
「皆守、イチャイチャしようぜ!」
「それ以上接近したら頚椎を折る」

構って欲しい葉佩って萌えるかな?
と思って書いてみたんですが。
うん、まあ、分かってたよ。

拍手ありがとうございます!





2013.06.13

 降ってきたなと空を見上げた横顔が、そこはかとなく嬉しそうに見えた。土を打つ雨音が、だんだんと強くなる。
 しょうがねぇなと言ってこちらを見た顔は、紛えようもなく嬉しそうに微笑んでいた。枝葉の隙間から落ちる雨粒が、じわりと肩を濡らす。
 そっちの方が振り込む雨が少なそうだと、それでなくとも触れそうだった肩が更に近付く。この狭い木陰ではどこに立っていても同じだと、思いはしたが言えなかった。

 やまねぇなと、やはり空を見上げて彼が言う。やまなければいいと、密かに思う。
 あ、テントウムシ。唐突に声が上がった。ナナホシだ。幸いを手に入れたかのように笑う。指先のテントウムシを、誇らしげに、しかし気遣いながら、そっと差し出す。小さな命に触れるのは、今でも怖い。
 こいつも雨宿りかな。早く飛びたいんだろうな。虫にさえ心を見出すその心が、何よりも貴く感じられた。
 もどかしいほど慎重に、テントウムシを指先から葉へと移す。その指先に見とれた。

 ああ、やんできたな。どこか惜しむような声が、この空間の終わりを告げる。彼も同じ心でいるのだと、願いのように思う。
 行こうぜと、振り向きもせずに彼は歩き出す。ためらいもせずに水溜りを踏む。一緒には行けないのだと、それがどうしようもなく悲しいのだと、彼はきっと理解していない。それでいい。




京一とひーさんのつもりで書き始めたら、あら不思議。
気分は木→京一になってましたとさ。
人外→人間がわたしの不変のジャスティス。
あと、遣らずの雨ネタが好きです。

拍手ありがとうございます。





2013.06.09

 存在しないものについて、彼は考えるのをやめている。存在するかも知れないものや、かつては存在していたもの、そんな事について考えるのは、学者か狂人だけだろうと、そう思っている。
 たとえば、明日について。それはまだ存在していないものだ。だから、考えない。考えても無駄だ。
 あるいは、昨日について。それはもう存在していないものだ。だから、考えない。考えても無駄だ。

 視線を上げて、荒野を眺める。この先に、以前にも立ち寄った街がある。もしくは、あるかも知れない。ないかも知れない。何がしかの理由でその街が存在していなかったとしても、彼は驚かない。
 明日には、その街に着けるかも知れない。でもこの先になにがあるか、眼前には存在しないので分からない。ならば、考えても意味がない。座ったまま思索の海で遊んでいても、真実には辿り着けない。

 瞬間だけを切り取って、過去も未来も切り捨てて、そうして今ここにいる自分と、その周りにあるもの、それが彼にとってのすべてだった。眼前には荒野がある。生きたいと願う自分がいる。それが、すべてだった。

 辿り着けないかも知れない。数時間後には死んでいるかも知れない。昨日の宿は快適だった。寡黙で無愛想な老婆が、少しだけ微笑んで「幸運を」と言ってくれたのが、とても嬉しかった。でもそれは、ここには存在していないものだ。考えても無駄だ。無意味だ。愚かしい事だ。愚かだと死ぬ。でも死にたくないので、考えない。
 ざくりと、足元で熱砂が音を立てた。

 あの人は、今頃。

 唐突に鼻先で幻がはじけた。
 東京は深夜だ。きっと眠っているに違いない。悪夢など見ていないだろうか。ふと目覚めて見えた闇に怯えてはいないだろうか。あの頃を思い出してはいないだろうか。並んで歩いた道を、夢に見たりはしていないだろうか。この仕事が終わったら会いに行こうか。深夜に窓を叩いてやろう。あの人が見た事もないような、珍しい物を持っていこう。

 ああ駄目だな、と彼はまた溜息をつく。
 どうしたって考えてしまうのだから、これはもう自分は愚かなのだと諦めるしかない。
 愚かしくとも、生きねばならぬのだから。




あれ?
なんだこの前向きオチ。
出てくる主張を力技で否定すると、なんとなく幸せっぽく見えるね。
という衝撃の事実を大発見したよ。
しかしこの事実は気に食わないな…
まあいいや、寝よう。

拍手ありがとうございます。





2013.06.07
愛人部屋のあれを下ろしました。
どこか別の場所で同じネタを見かけてもそっとスルーしてください。

最近、描くのが楽しくてしょうがないんですよ。
という訳で、書くのはちょっと休憩中です。
もともと描くの好きなんです。
もちろん書くのも好きなんですが。

という訳で、今はここじゃない所で遊んでます。
と言いつつ拍手には大喜びしますよ。
左耳の垂れたウサギが赤くなるのと同じくらいに。

拍手ありがとうございます!





2013.06.02

 ふと振り向いて、肩越しに背後を見て、彼が視界に入った事に安堵する。そうしてから前を向き、後ろを歩く彼には知られぬよう唇を噛む。
 不安だったのだ。気付いたらひとりになっているのではないかと、彼に見限られて、置いていかれるのではないかと、いつだって恐れていた。振り返っても彼が見えなかったら、自分は発狂するかも知れない。本気でそう思う。
 彼と自分は別の人間で、今はたまたま同じ道を歩いているが、いずれは違う場所を目指すだろう。その岐路で、自分は笑っていられるだろうか。笑いながら手を振って、良い旅をと言えるだろうか。そんな事を、最近よく考える。

 自分の知らないところで、彼は死ぬのだろう。
 彼の知らないところで、自分は死ぬのだろう。

 それが耐えがたく恐ろしいのだと、背後の靴音に耳を澄ましながら唇を噛む。
 きっとほどなく、この足は進めなくなる。いっそ無残に折れてしまえば、言い訳にもなるのに。




ええと、違うんです。
すごい腑に落ちる考察を読んだんです。
萌えツボがほぼ一致してる人が、言語化できずに漠然と感じてた萌えをしゅるっと的確に表現してくれたような。
で、そんなツボをわたしも言語化してみようと思った訳ですよ。

違うんだ。そうじゃないんだ。
わたしが萌えてるのはここじゃないんだ。
ここじゃないんだよ。もう一回ぐらい言っとこう。
ここじゃないんだ!

悩ましきは自分のツボを自分で押せないもどかしさよ。
自分のツボが果てしなく遠い。

拍手と【愛】ありがとうございました!





2013.06.01
いつのまにか梅雨入りしてたみたいですね。
って打って、初めて「入梅」を「つゆいり」って読むんだと知りました。
ずっと「にゅうばい」って読んでたよ。
まあ別にそれでも間違ってないんだけどね。

青梅の頃の、露の季節。
好きな言葉です。

洗濯物が乾かないのも
一昨日のカレーがもう駄目になってるのも
新聞とか郵便物がしっとりしてるのも
道に車が増えるのも
濡れるのも
冷たいのも
やだなぁって思うんですが、なんとなく雨が好きです。
土砂降りでも、しとしと降りでも。
そんな話を書きたい。

拍手と投票ありがとうございます。